ずっと前から決めていた、小さな計画




 Happy Birthday・・・・For you




 下校時刻の迫る部室で膝を抱えて小さく座り込んでいる人影.

 いつものことなので手塚は然程驚かなかった.

 感じたものがあるとすれば、それは違和感.

 いつもならすぐに振り向いて「帰ろう」と言い出すのに.

 (俺は何かしただろうか・・・)

 改めて1日を振り返ってみれば、今日の間にどれ程会話をしただろう.

 まともに声さえ聞いてない気がした.

 考えながら手塚は少しの苛立ちを感じていた.

 自分の誕生日など、今まで特別に思ったことはなかったが恋人がいれば少なからず期待くらいする.

 何人に祝いの詞をもらっても、肝心のその人に口を噤まれては意味がない.

 「不二.」

 呼ばれてようやく不二は顔を上げた.

 「帰らないのか.」

 そっと頬をなでると擦り寄ってくる、猫の様な態度にべつに機嫌が悪い訳ではないのだと確信する.

 「一言くらい祝ってくれてもいいんじゃないか」

 こんなことを言うのは至極自分らしくないと思った.

 一瞬きょとん、と手塚を見上げた不二は、そして拗ねたように口を尖らせて話しはじめた.

 目が覚めたときからそわそわしてた.

 30分早く起きて、鼓動に比例するように足早に学校に向かった.

 歩き慣れたはずの歩道の橙のタイルすら、真新しい足音を立てるような気がした.

 部室へは2番のり.

 まだ鍵当番の大石しかいなかった.

 この時点で、計画は完璧かつ順調だったのだ.

 あとは、次に入ってくるであろう手塚に「おめでとう」と言えばいい.

 ドアノブの回る音.軋む扉.耳は異常に敏感に働いた.

 なのに、その姿を確認して真っ先にでた言葉は「おはよう」だった.

 瞬時に失敗した、と思った.

 日頃の習慣を侮ってはいけない.

 思えば、ここで失敗を悔やんでる時間なんてなかったのだ.

 (練習しとけばよかった・・・)

 背中越しに2人の会話を聞きながら、タイミングをはかってるうちに、

 大石に先を越されてしまったのだ.

 「そんなことか.」

 呆れたような一言に不二はむっとして反論した.

 「そんなことじゃないよ.誰よりも先に祝ってあげたかったんだから.」

 子供にするように薄茶の髪を撫でる.

 「だからね、最初≠ヘ諦めた.一番最後≠ノする.」

 「?」

 「今日手塚の家行っていい?」

 「は?」

 手塚のこんな顔を見るのは初めてだと思った.

 「泊まるのか?」

 「だめ?」

 そんな顔をされればダメだと言えるはずもなく、二人は並んで手塚宅へ帰路についたのだった.




 歩く、歩く


 時々肩が触れたなら


 君が隣に居る証


 最上級のおめでとう≠ワであと少し・・・・